THE戯言

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2019年、まず読んでおくべき一冊!- FACTFULNESS(ファクトフルネス)

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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 昨年夏頃に英語版で見つけたこちらの本、年末近くになって日本語訳が出版されるという情報が入り、それからずっと楽しみに待っていました。

この三連休で読み終えましたが、期待どおりの面白さ。2019年のはじめにこの本に出会えたのは幸運であるとはっきりと断言できます。

去年の段階でも紹介記事を書いていますが、日本語版を読んだ今、改めて紹介したいと思います。

私たちが抱く世界のイメージには思い込みが溢れています。

「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう」 

もし上記の内容にあまり違和感を感じなかったならば、おめでとうございます。この本はまさにあなたのためにあります。違和感を感じたなら、この本で答え合わせをしてみましょう。

本書は、世界銀行や国連などの国際機関がまとめ一般に公開されている種々の統計情報を使い「豊かな先進国と貧しい発展途上国」といった分断などもはや存在しないということや、昔に比べ世界ははるかに良くなっているということをつまびらかにしています。

多くのデータが紹介されている本書を読み進めるうちに、この世界における人間の生活状況は想像していたよりもずっと良好だったということに気づくでしょう。この新しい発見に伴う素直な驚きを何度も経験できるのが、この本を読んでいて楽しいと感じるところです。

 

本書の中心コンセプトは、世界の人々を所得レベルによって4つに分けるという分類方法です。

レベル1から4までの順に1日あたりの収入が多くなっていきます。レベル1が1日1ドル、レベル2が1日4ドル、レベル3が1日16ドル、レベル4が1日32ドルを目安としています。

この所得レベルごとの生活の様子の違いを下記のようにまとめています。

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これは著者の一人であるアンナ・ロスリング・ロンランドが実施した「ドル・ストリート」 というプロジェクトで集めた写真がもとになっています。世界50ヵ国の300世帯から、家の材質、食事、寝室、トイレ、歯ブラシをはじめとした日常生活の様子が記録されています。

著者はこのプロジェクトを通じて、国や文化、宗教に関わらず所得レベルが同じくらいの人たちは同じような暮らしぶりをしているということを発見します。逆に同じ国に生活している人でも所得が違えば生活ぶりは全く違います。

今の世界ではレベル2、レベル3の暮らしをしている人たちが50億人。世界のほとんどの人は中間所得層に属しているのです。「先進国」と「発展途上国」という単純な二項対立では掬いきれない世界の状況が明らかになりましたが、これが著者の主張である「事実に基づく世界の見方」なのです。

 

イメージや思い込みを排した、データとファクトに基づく世界の姿を理解できるという点だけでも、本書の価値は極めて高いと感じます。

しかし本書においてさらに大きな価値を感じるところは、「なぜ私たちは思い込みにとらわれてしまうのか?」「バイアス(偏見)を排除して物事を正確に認識するためにはどうしたらよいのか?」ということに問いに対し答えを示しているところです。

私たちには本能的に「ドラマチックすぎる世界の見方」をしがちです。その本能を排して事実に基づく見方を学ぶことで、ありのままの世界を理解できるようになります。

世界の姿は変わりません。もしこの本を読んだ後に世界の見え方が少しでも変わって見えたのなら、それは私たち自身が変化したからにほかなりません。読み手を変えるほどの力を持つ本は多くはありませんが、この本は間違いなくそのうちの一冊であると断言します。

「Factfulness (ファクトフルネス)」とは、「我々には物事の正しい理解を歪める思い込みや思考のクセがあるということをしっかり認識し、それらを排除することで物事を正しく理解、判断できるようにすること」であると言えるでしょう。

人によってはこれを「リテラシー」と呼ぶ人もいるかもしれません。いずれにせよ、現状の正しい把握は、正しい行動を起こすために必須の条件となります。

情報に溢れ、フェイクニュースが世界的に問題になっている昨今、この能力はますます重要性を持つようになっています。

本書の最終章、「ファクトフルネスを実践しよう」の教育の章にある下記の部分は個人的に胸に刻んでおこうと思いました。

なによりも、謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。

謙虚であるということは、本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくことだ。自分の知識が限られていることを認めることだ。堂々と「知りません」と言えることだ。新しい事実を発見したら、喜んで意見を変えられることだ。謙虚になると、心が楽になる。何もかも知っていなくちゃならないというプレッシャーがなくなるし、いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい。

好奇心があるということは、新しい情報を積極的に探し、受け入れるということだ。自分の考えに合わない事実を大切にし、その裏にある意味を理解しようと努めることだ。答えを間違っても恥とは思わず、間違いをきっかけに興味を持つことだ。「どうしてそんな事実も知らなかったんだろう?この間違いから何を学べるだろう?あの人たちはバカじゃないのに、どうしてこんなことをしているんだろう」と考えてみることだ。好奇心を持つと心がワクワクする。好奇心があれば、いつも何か面白いことを発見し続けられる。

世界は変わり続けている。知識不足の大人が多いという問題は、次の世代を教育するだけでは解決できない。学校で学ぶことは、学校を出て10年や20年もすれば時代遅れになってしまう。だから、大人の知識をアップデートする方法も見つけなければならない。

 知識不足の大人のひとりとして、常に謙虚に好奇心をもって知識をアップデートしていかなければと強く思いました。

言うは易く行うは難しと思いますが、これは世界をよくするために必要な最初の一歩であるとしっかり認識して精進していきたいと思いました。

大人にも子供にも、できるだけ多くの人に読んでもらいたい一冊です。