THE戯言

Quitters never win. Winners never quit.

目を背けてはいけない日本の貧困問題について - 経済格差は確実に広がっている模様

BloombergのオピニオンライターであるNoah Smithによる日本の貧困状況に関するツイートが話題になっています。

"日本の貧しい人々はちゃんとしている。仕事を持ち、暴力を避け、ドラッグもしないし未婚の状態で子供を持つこともしない。それでもなお彼らは貧しい。

これが示すことは、貧困の主な原因が問題のある行動様式にあるわけではないということだ。"

 

ツイートの目的は、アメリカの保守派による貧困層への自己責任論的批判が的外れであるという反論なのですが、その主張の論拠として日本が挙げられているのです。

曰く、一般的に貧困の原因と考えられる、労働意欲の欠如、薬や暴力的事件などの犯罪行為、片親子持ちといった家庭環境といった要素は貧困の主な原因ではない。日本はこれらの状況は世界トップクラスで良好なのに、アメリカと同じくらい貧困率が高いではないかと。

ついに日本の貧困状況に光が当てられた形になります。

 

今回の一連のツイートで指摘されたのは、日本の貧困率(と子どもの貧困率)です。

等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が全人口の中央値の半分未満の世帯員を相対的貧困者としている。

相対的貧困率(ソウタイテキヒンコンリツ)とは - コトバンク

ざっくりいうと、日本人全員を可処分所得順に高い方から並べて、ちょうど真ん中にあたる人の所得額の半分以下しか所得がない層を貧困層とみなすということです。これを相対的貧困とし、人口全体に対する割合が(相対的)貧困率となります。

 

日本の貧困率は15.7%で、だいたい6人に1人は貧困層にあることになります。この割合はヨーロッパ諸国よりも高く、アメリカの水準に近づいています。

  "日本の貧困率、国際的には収入が全人口の中央値の半分未満しかない人の割合と定義される用語だが、これがヨーロッパ諸国よりもアメリカの水準に近い。"


厚労省が出している「平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況」でもこの貧困率の状況を確認できます。

この資料を見ると、昭和60年から緩やかに、かつ着実に貧困率は上がり続けてきたことがわかります。

*赤い折れ線グラフが相対的貧困率

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生活意識に関する調査では、56.5%の人々が生活が苦しいと回答しています。また、そう回答する層が昔と比べて増えてきていることを見ても、貧困層が拡大しているという事象に合致する結果だといえるでしょう。

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Noah Smithは、こういった日本の状況を紹介しつつ、貧困が生まれるのは市場経済の必然であり、貧困に陥いる理由を個人に帰するのは間違いであると主張します。

そして、その解消には政府の介入政策による支援で再分配をすることが必要だと断言します。

   "それではいったい何が貧困を生み出すのだろうか? 貧困は市場経済の自然な帰結だ。貧困を解消するためには、この割れ目に落ちてしまった人々を支援するための介入が必要だ。それ以外に方法はない。" 

日本では、経済的苦境は隠される傾向がありあまり公に出てくることがないとの指摘もありますが、今後貧困層がさらに拡大してきた場合には生活保護などのセーフティネットを維持する負担が増えることもありえます。

また、他の先進国でおこっているように、経済格差の大きいところにはポピュリズムが台頭してくる可能性もあります。

今回の指摘を契機にして、日本でも貧困の解消に力をいれることを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

 

ちなみにこちらのサイトでグラフ化してくださってますが、日本の所得の中央値は1993、1995年の550万円から下がっており、2017年には423万円になっています。昔に比べ低所得の層が拡大しているのは間違いないようです。

www.garbagenews.net

 

参考までにNoah Smithの一連のツイートをざっくりとした翻訳付きで下記に紹介します。一つ前のツイートも一緒に表示されてしまうので見にくいかもしれません(すみません)。原文気にせず訳の部分だけお目通しください。

"日本の貧しい人々はちゃんとしている。仕事を持ち、暴力を避け、ドラッグもしないし未婚の状態で子供を持つこともしない。それでもなお彼らは貧しい。

これが示すことは、貧困の主な原因が問題のある行動様式にあるわけではないということだ。"

 

 

"2/アメリカの保守派は、だらしなさや犯罪、無責任さこそが貧困の原因だとすることが多い。このステレオタイプな見方は特に黒人の人たちに向けられる。"

 

"3/しかし、この貧困とは「モラル」の問題であるという見方を貧しい白人の人々にも対しても向けることがある。National ReviewにおけるKevin Williamsonの記事を見てみよう。" 

 

"4/しかしもし暴力、ドラッグ、未婚の子持ち、働く意欲の欠如が貧困の原因であるとしたら、こういうことをするひとがいない国では貧困率はとても低くなるはず...ですよね? そういう国に心当たりがある。日本だ。"

 

 "5/日本は地球上でもっとも暴力が少ない国であると言えるだろう。"

 

 "6/実際のところ、以前よりもさらに暴力的な事件は減っている。"

 

 "7/そして、日本でドラッグをするひとはほとんどいない。"

 

 "8/片親の割合はどうだろう? アメリカよりもずっと低い。"

 

 "9/怠惰さについては? 日本人はとても働いている。仕事に就いているひとはアメリカよりも多いし、働く時間も長い。"

 

 "10/だから日本は他の裕福な国と比べて貧困率がずっと低くても不思議じゃない..ですよね? ところがそんなことはない!!"

 

  "11/日本の貧困率、国際的には収入が全人口の中央値の半分未満しかない人の割合と定義される用語だが、これがヨーロッパ諸国よりもアメリカの水準に近い。"

 

   "12/日本では一般的に貧困は隠されている。政府も、人々自身も必死にそれを隠そうとする。"

 

   "13/多くの日本人が繁栄のワゴンから滑り落ち、そこに再び戻ることができないでいる。"

 

   "14/日本には貧困にある子どもが350万人いる。子どもの貧困率は14%だ。"

 

   "15/日本の経験が示すことは、貧困の主な原因は問題のある行動様式にあるとする保守派の理論に何か重大な、重大な誤りがあるということだ。" 

 

    "16/それではいったい何が貧困を生み出すのだろうか? 貧困は市場経済の自然な帰結だ。貧困を解消するためには、この割れ目に落ちてしまった人々を支援するための介入が必要だ。それ以外に方法はない。" 

 

    "17/我々は、貧しい人々に行動を改めるよう声を荒げるのをやめ、ヨーロッパの福祉国家や低収入の仕事の賃金をあげる方法に目を向けるべきだ。"