THE戯言

Quitters never win. Winners never quit.

popin Aladdin大型アップデート!「App Selection」機能搭載でゲームコンテンツの拡充にフォーカスか!?「U-Next」対応でストリーミング動画にも抜かりなし

再びpopIn Aladdinのアップデートネタですが、今回は大きな変更です。

今回のアップデート内容は3つ。

  1. 「U-Next」への対応。
  2. 「がくしゅうポスター」のアップデート。
  3. 新アプリ「App Selection」の登場。

1. 「U-Next」への対応

Youtube、AbemaTV、Netflix、Prime Video、DAZNとメジャーな動画配信サービスに対応してきたpopin Aladdinが、またひとつカバー範囲を増やし、U-Nextにも対応しました。

ホーム画面からログイン、または会員登録を済ませればあとは好きなドラマや映画が見放題。LIVE配信なんてのもあるんですね。

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個人的にはHuluよりもU-Nextが早かったのはちょっと意外な感じでしたね。今年はディズニーも専門の動画配信サービスを開始する予定ですが、それにも対応してくれるのでしょうか。子どもに大人気のコンテンツであるディズニーは、子ども向けの面を強調するpopin Aladdinとして何としてもとりにいきたいコンテンツでしょうね。実写版アラジンが観たいぞ。

動画の配信サービスについてはだいぶカバーされてきたと思うので、今後もし対応するとしたらTwitchやOPENREC.tvのようなゲーム実況動画サービスの方に行くというのもありなのかなあと勝手に思っています。

後述するように、App Selectionというアプリも出てきたところですし、ゲーム系コンテンツの拡充は選択肢のひとつとしてはありかなと思います。あんまりゲーム色が強くなりすぎると子どもを持つ親御さんからは拒否反応出そうですが....w なんにせよ今後も期待大です!

 

2. 「がくしゅうポスター」のアップデート

popIn Aladdinの子ども向けコンテンツである「がくしゅうポスター」。ひらがな、カタカナ、アルファベット、九九表の投影ができるというものでしたが、これにちょっとしたアップデートがありました。

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ひらがなを選択すると、そのひらがなが使われている例を読み上げてくれます。「あ」であれば「あり」ですね。リモコンを子どもに渡して、好きなひらがなが入っている単語をひたすら読み上げてもらうような形で使えるかなあと思いました。以前は単なる静止画ポスターだったので、だいぶインタラクティブになったと思います。

ちなみに右上の「クイズ」を選ぶと、イラストの名前を当てる「なまえをあてよう」クイズと、特定のひらがなからはじまる単語を考える「たくさんかんがえよう」クイズをあそぶことができます。これらは1日1回までは無料で遊べます。それ以上遊びたい場合には月額120円で購読する必要があります。ついにpopIn Aladdinにもサブスクリプションサービスが導入され始めましたね...!

また、この機能は今のところひらがなひょうのみの対応となっているので、今後カタカナやアルファベットでも同じ機能が使えるようになることを期待します!

 

3. 新アプリ「App Selection」

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個人的に今回のアップデートでもっともインパクトがあったのがこちらです。以前、popIn AladdinのアプリにApp Storeが導入された際に、今後アプリのプラットフォーム化が進むかもという事を書きましたが、このアプリの登場でその可能性がより高くなったように思います。

sat-1.hateblo.jp

今回のアップデートでは4つのゲームが遊べるようになっています。気に入ったものがあればそれぞれダウンロードする形になっています。

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フラッピィーポッピー....どこかで見たことがあるような...w

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今回はこちらをダウンロードすることにしました。「LEGO® DC Mighty Micros」。レーシングゲームです。ちなみにゲームのダウンロードには、Aladdin IDが必須になります。まだ作っていない人はここで作成してしまいましょう。

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ダウンロード完了後、ゲームのアプリがホーム画面に追加されます。

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アプリを選択してゲーム開始です。

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結構良くできています。リモコンで操作するので、そこまで複雑な操作は発生しません。使うボタンは左右への移動ボタンと決定ボタンのみのシンプル仕様です。グラフィックや操作性は悪くないので、普通に遊べます。

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ステージ上のコインを集めると、クリア後にアイテムがもらえます。別のキャラクターを使用できるようになったり、新しいステージが開放されたりするようです。

こちらのゲームはスマホ用アプリとしてすでにリリースされているものをpopin Aladdinでも遊べるように対応させたもののようです。ストーリーが進むとアプリ内課金できるようになるのかと思いましたが、オリジナルのスマホアプリ版でも課金ポイントはありませんでした。

ただもし今後popIn Aladdinがアプリのプラットフォームを目指す方向にいくのであれば、どこかで課金できる仕組みを作らないと開発社を集めるのに苦労するのではと思います。もしくはそもそものハードウェアの普及台数を考えるとまだ規模が小さいので、本格的にプラットフォームを目指すことはまだ優先度が高くないのかも。今どれくらい売れてるんだろう。

というわけで、今回もワクワクするようなアップデートでした。新機能自体が優れているということよりも「これが出てきたということは今後はこうなりそうだな、なったら面白いな」と思わせてくれるのがこのプロダクトの大きな魅力だと感じてます。

次はどんなアップデートを見せてくれるのか、ヘビーユースしながら待ちたいと思います。

popin Aladdinアプリアップデート - 地味に便利なライト調節機能

恥ずかしながら最近気づいたので今更のアップデートになってしまうのですが、popIn Aladdinのアプリにアップデートがあり、ライトの調節がアプリでできるようになっていました。

 

今までアプリ上ではプロジェクターの操作しかできず、ライトの調節はリモコンで行う必要がありました。なので操作するのにアプリとリモコン両方を使う必要があるケースがあり、それであればわざわざアプリを使う必要はないかなと思ってあまり使用頻度は高くありませんでした。

それがアプリのみでプロジェクターとライトの両方を操作できるようになったので、この変更は大きいと思います。

プロジェクター⇆ライトのモード切り替えは右上のアイコンで行います。

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リモコンでは点灯ボタンとライト切り替えボタンの2つしかないので、明るさ加減を調整するのにボタンを連打したり、そもそもちょうどいい調整ができなかったたりと、その操作性に限界がありました。アプリでは「常夜灯ボタン」や「全灯ボタン」が追加されたり、「明るく」「暗く」「寒色」「暖色」メニューが追加され、好みの調整が一発でできるようになりました。しかも、「明るく」「暗く」「寒色」「暖色」についてはその程度も微調整できるようになっています。ユーザーがそれぞれ好みの雰囲気にライトを調整できるようになったのは非常に大きいなと思いました。

 

こういう地味に見えるアップデートが実はユーザー体験に大きな影響を与えるので、非常に重要だと思います。こういうところまでしっかり気がまわるところを見ると、会社がちゃんとこの製品をよいものにしていこうという意識が強い様子が伝わってきて嬉しくなりますね。

本当にいい製品なので今後のアップデートにも期待しています!

 

夏休みの読書シリーズ(3)その学び、下戸にとっては迷惑以外の何物でもない!?「人生で大切なことは泥酔に学んだ」

第3弾は「人生で大切なことは泥酔に学んだ」。日本の偉人たちの酒における失敗談をよくもまあこれだけ、というほど詰め込んだエッセイだ。

人生で大切なことは泥酔に学んだ

人生で大切なことは泥酔に学んだ

 

これがまあ、めっぽう面白い。そもそも人が酒によって異常な行動をする様子は見ていて面白い。自分に危害が及ばない限りはという条件付きではあるが。エッセイであればこちらの無事は保証されている。であれば面白いのは保証されたようなものである。 

日本の偉人の酒の失敗を集めている、というがその失敗の内容は偉人でなく一般人のものであったとしてもヤバイものだらけだ(一般人のものであれば記録に残ることはなかっただろうが)。ヤクザに殴りかかるというなんていうのはジャブみたいなもの。失明のリスクを恐れず燃料アルコールに手をだす命知らずのエピソードや上司の奥さんの前に全裸で立ちふさがるという命知らず(社会的に)のエピソードがバンバン登場する。

さらには庭で日本刀を振り回す、大砲を誤射するなどという、もはや現在の日本では再現したくともできないであろう話まで登場する。今の時代に生まれてよかった。

取り上げられる人物も多岐に渡る。中原中也太宰治など、すでに酒に関するお行儀が悪い人たちは当然のこと、三船敏郎梶原一騎力道山などはこの本に名を連ねていても違和感はない。ただ小林秀雄福澤諭吉の名前を見つけた時には意外だった。

それもあってなのか、福澤諭吉のエピソードが強く印象に残っている。前述の上司の家で酒を飲んだ際に、上司の奥さんに対して全裸立ちふさがりという暴挙に出たのはこの福澤なのである。『福翁自伝』にはこれ以外の全裸事件やその他の酒絡みのエピソードが出てくるという。このエッセイを読んだ後に『福翁自伝』に手を出してみようという人は少なくないはずだ。

著者によるこのパワーセンテンスが強烈なインパクトを残している。

慶応義塾大学で不祥事が起こると最近は「諭吉が泣いている」という表現が使われるが、かつては諭吉とその仲間達に泣かされた人も少なくなかったのだ。

 さて、これらの強烈なエピソードから著者はいったい何を学んだというのか。「リスク管理編」や「宴会編」と、失敗エピソードをいくつかケースごとに分類して学びを得ようとしている努力は感じるのだが、個別ケースが「大事な仕事を抱えながらアル中になったら」や「一日八時間でも呑みたかったら」と尖りまくっているので、どこまで先人の体験が役に立つのかわからない。申し訳程度に教訓を得ようとする体裁を整えているのではという疑念は正直消えない。

率直にいって、自身も呑兵衛である著者が、自分よりもひどい失敗をしている人をみて「自分はまだマシな方だ」と安心するための研究の結果、というのが本書の立ち位置として正しいのではないか。

結論からいいて、著者が泥酔に学んだという人生で大切なこととは「酒を呑んでしくじったところで人生は終わらない。」ということだろう。本書はめちゃくちゃ面白いので、著者に才能があることは間違いない。有能な人物がポジティブな学びを得たことは素直に喜ばしいことなのだが、偉人だからこそ人生が終わらなかったということはいえないだろうかと心配になる。同じくらいひどい失敗をした凡人が、それによって人生が終わってしまったケースもあるのではないか。

著者にはぜひ後世に名を残すレベルで偉業を成し遂げてもらって、少々の酒の失敗は不問にされるレベルの偉人になってもらいたいとおもう。

 

とりあえずこれから「福翁自伝」を読まなければ。

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

 

夏休みの読書シリーズ(2)いまだから知っておきたい組織との付き合い方「サバイバル組織術」

夏休みの読書シリーズ第2弾は佐藤優シリーズ。

サバイバル組織術 (文春新書)

サバイバル組織術 (文春新書)

 

吉本興行やかんぽ生命のニュースが連日報道されていたタイミングでの出版は神がかり的と感じるレベルでした。というのも自分がその当事者であればどう振舞うべきか、同じようなトラブルに自分が巻き込まれたらどうすべきかを判断するのにこの上なく参考になる一冊だからです。

本書では、上司や部下との付き合い方、人事と昇進、燃え尽き症候群、組織の価値観の内面化、不測の事態が起こった時の振る舞い方など、組織の中で生きていく上でストレスがかかる重要なポイントをとりあげています。

本書がユニークなのは、そのポイントポイントで組織がどう動くか、個人はどのように動くべきなのかということを小説やドラマの作品を通じて見ていくところです。文学作品を使い現実のシミュレーションを行う形になります。他人の人生を追体験できるのが小説の優れた効用だと思います。

一点気をつけるべきことは、小説のストーリーや設定についての情報がたくさんでてくるので、作品を取り上げた理由に集中しておかないといつの間にか単なる文学作品について学びました、的なことになりかねないことです。笑

率直に言って本書を通じて明らかになる組織の行動論理は、組織の中ですでにある程度時間を過ごしてきた人であればリアリティをもって実感できるものだと思います。そして残念なことに、それらの論理はあまり個人にとっては好ましいものではありません。

組織と個人の行動論理が異なることによって生じるストレスフルな環境をサバイブするための実践的な知恵が詰まった一冊だと思います。お盆休みでいったん組織との距離をおけるこの時期にこそ読んでおくべき一冊かもしれないと感じました。

 

こちらは組織よりはもう少しトピックを扱っており、仕事とどのように向き合っていくべきかについて考える本。日本が階級社会化してきており「もはや自助努力で解決できないくらい事態は深刻」という著者の現状分析は、もっと危機感を持って受け止められるべきと思います。

佐藤優直伝!  最強の働き方

佐藤優直伝! 最強の働き方

 

 

夏休みの読書シリーズ(1)このうえなくリアルな国際金融の話「金融ダークサイド」

金融ダークサイド 元経済ヤクザが明かす「マネーと暴力」の新世界
 

お盆休みに入ったので、本を読むまとまった時間がとれるようになった。せっかくなので、読んだ本については備忘の意味も込めてこちらで紹介していこうと思う。

 

まずはこちらの本。一般の人が知り得ない複雑怪奇な国際金融の裏側をつまびらかにしているとして発売当初から話題になっていた「金融ダークサイド」。ダークサイドと銘打たれているのは、取り上げているトピックが主にマネーロンダリングの話になるからだろう。とはいえ、ロンダリングの手法自体は非合法ではない。国際金融の世界では日常的に行われている、合法的な運用方法だ。少なくともこの本で紹介されている方法についてはそうである。ロンダリングに薄暗い響きがつきまとうのは、その対象となる資金が非合法活動によって用意されたものだからである。

そう考えると、この本は我々一般人にとっては遠い世界のように感じる国際金融のリアルを垣間見ることができる貴重な資料となるかもしれない。ロンダリングの3つのステップ、「プレースメント」「レイヤーリング」「インテグレーション」を筆者が実際に行った方法を例に説明するくだりは始めて知ることばかりで「へぇ〜」と感心しきりだった。

手っ取り早く3つのステップがなんなのか知りたい人は下記のカジノの例がわかりやすいと思う。

カジノの場合では、犯罪収益をチップに換えることが「プレイスメント」に当たる。そして場に賭けることで、正規のチップと黒いチップが層になるので、レイヤーリングが完成する。賭けの工程で白いチップと黒いチップは統合され、最後に清算して申告するものは申告すればインテグレーションが完了となる。

 これもマネーロンダリングの手法の一つとして実際に行われていることだろうが、当然世界の黒い金をすべて洗浄する方法がこれだけなはずはない。

そして、このマネーロンダリングケーススタディとして多くのページが割かれているのが日産のカルロス・ゴーン逮捕事件だ。ニュースで大変な話題になっていたが、何が起こっていたかを正確に理解していた人は少ないのではないだろうか。作者による事実関係の整理と分析によって、あの事件の問題がどこにあって、ゴーン、日産、検察などの関係者の思惑はどうだったのかということについて説得力のあるストーリーが展開されていく。「私(作者)があのときゴーンにアドバイスするとしたらどうするか」という部分は、作者の金融のプロとしての高い力量がリアルに感じられるところだ。ファイナンスでミスをした上司を助けるための施策を考えるなんて、ビジネスケースとしては完全にブラックな内容だが、読み応えは抜群だ。

 

国際金融は政治の世界とは切っても切り離せない。この世界において圧倒的に特別な立場にいるのはやはりアメリカだ。対テロ戦争という大義名分のもと、国際送金の情報にアクセスできるという特権を有しているはアメリカだけだ。事実上金融システムを支配していると言える。作者は自身の口座を凍結させられた過去もあり、アメリカの恐ろしさについては本書中でなんども強調している。

この圧倒的な特権を有するアメリカに対抗するためにロシアは仮想通貨について開発を進めているとのこと。ロシアの軍事力の拡大はその通貨を支えるための裏付けであるという分析も面白い。つまり金融の世界で優位に立つには軍事力が不可欠という非常に野蛮な話なのだが、これもまた妙なリアリティを感じる。

 

普段聞きなれない単語が出てくることも多く、ちょっと難しいかもしれないが、時間の取りやすいいまだからこそ挑戦してみてもよいかもしれない。

 

 同じ作者のこちらの本も面白かった。マンガで表現がだいぶポップになっているが内容は相当ヤバイものだらけで軽く引くレベル。

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 完全版

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言 完全版

 

目を背けてはいけない日本の貧困問題について - 経済格差は確実に広がっている模様

BloombergのオピニオンライターであるNoah Smithによる日本の貧困状況に関するツイートが話題になっています。

"日本の貧しい人々はちゃんとしている。仕事を持ち、暴力を避け、ドラッグもしないし未婚の状態で子供を持つこともしない。それでもなお彼らは貧しい。

これが示すことは、貧困の主な原因が問題のある行動様式にあるわけではないということだ。"

 

ツイートの目的は、アメリカの保守派による貧困層への自己責任論的批判が的外れであるという反論なのですが、その主張の論拠として日本が挙げられているのです。

曰く、一般的に貧困の原因と考えられる、労働意欲の欠如、薬や暴力的事件などの犯罪行為、片親子持ちといった家庭環境といった要素は貧困の主な原因ではない。日本はこれらの状況は世界トップクラスで良好なのに、アメリカと同じくらい貧困率が高いではないかと。

ついに日本の貧困状況に光が当てられた形になります。

 

今回の一連のツイートで指摘されたのは、日本の貧困率(と子どもの貧困率)です。

等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が全人口の中央値の半分未満の世帯員を相対的貧困者としている。

相対的貧困率(ソウタイテキヒンコンリツ)とは - コトバンク

ざっくりいうと、日本人全員を可処分所得順に高い方から並べて、ちょうど真ん中にあたる人の所得額の半分以下しか所得がない層を貧困層とみなすということです。これを相対的貧困とし、人口全体に対する割合が(相対的)貧困率となります。

 

日本の貧困率は15.7%で、だいたい6人に1人は貧困層にあることになります。この割合はヨーロッパ諸国よりも高く、アメリカの水準に近づいています。

  "日本の貧困率、国際的には収入が全人口の中央値の半分未満しかない人の割合と定義される用語だが、これがヨーロッパ諸国よりもアメリカの水準に近い。"


厚労省が出している「平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況」でもこの貧困率の状況を確認できます。

この資料を見ると、昭和60年から緩やかに、かつ着実に貧困率は上がり続けてきたことがわかります。

*赤い折れ線グラフが相対的貧困率

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生活意識に関する調査では、56.5%の人々が生活が苦しいと回答しています。また、そう回答する層が昔と比べて増えてきていることを見ても、貧困層が拡大しているという事象に合致する結果だといえるでしょう。

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Noah Smithは、こういった日本の状況を紹介しつつ、貧困が生まれるのは市場経済の必然であり、貧困に陥いる理由を個人に帰するのは間違いであると主張します。

そして、その解消には政府の介入政策による支援で再分配をすることが必要だと断言します。

   "それではいったい何が貧困を生み出すのだろうか? 貧困は市場経済の自然な帰結だ。貧困を解消するためには、この割れ目に落ちてしまった人々を支援するための介入が必要だ。それ以外に方法はない。" 

日本では、経済的苦境は隠される傾向がありあまり公に出てくることがないとの指摘もありますが、今後貧困層がさらに拡大してきた場合には生活保護などのセーフティネットを維持する負担が増えることもありえます。

また、他の先進国でおこっているように、経済格差の大きいところにはポピュリズムが台頭してくる可能性もあります。

今回の指摘を契機にして、日本でも貧困の解消に力をいれることを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。

 

ちなみにこちらのサイトでグラフ化してくださってますが、日本の所得の中央値は1993、1995年の550万円から下がっており、2017年には423万円になっています。昔に比べ低所得の層が拡大しているのは間違いないようです。

www.garbagenews.net

 

参考までにNoah Smithの一連のツイートをざっくりとした翻訳付きで下記に紹介します。一つ前のツイートも一緒に表示されてしまうので見にくいかもしれません(すみません)。原文気にせず訳の部分だけお目通しください。

"日本の貧しい人々はちゃんとしている。仕事を持ち、暴力を避け、ドラッグもしないし未婚の状態で子供を持つこともしない。それでもなお彼らは貧しい。

これが示すことは、貧困の主な原因が問題のある行動様式にあるわけではないということだ。"

 

 

"2/アメリカの保守派は、だらしなさや犯罪、無責任さこそが貧困の原因だとすることが多い。このステレオタイプな見方は特に黒人の人たちに向けられる。"

 

"3/しかし、この貧困とは「モラル」の問題であるという見方を貧しい白人の人々にも対しても向けることがある。National ReviewにおけるKevin Williamsonの記事を見てみよう。" 

 

"4/しかしもし暴力、ドラッグ、未婚の子持ち、働く意欲の欠如が貧困の原因であるとしたら、こういうことをするひとがいない国では貧困率はとても低くなるはず...ですよね? そういう国に心当たりがある。日本だ。"

 

 "5/日本は地球上でもっとも暴力が少ない国であると言えるだろう。"

 

 "6/実際のところ、以前よりもさらに暴力的な事件は減っている。"

 

 "7/そして、日本でドラッグをするひとはほとんどいない。"

 

 "8/片親の割合はどうだろう? アメリカよりもずっと低い。"

 

 "9/怠惰さについては? 日本人はとても働いている。仕事に就いているひとはアメリカよりも多いし、働く時間も長い。"

 

 "10/だから日本は他の裕福な国と比べて貧困率がずっと低くても不思議じゃない..ですよね? ところがそんなことはない!!"

 

  "11/日本の貧困率、国際的には収入が全人口の中央値の半分未満しかない人の割合と定義される用語だが、これがヨーロッパ諸国よりもアメリカの水準に近い。"

 

   "12/日本では一般的に貧困は隠されている。政府も、人々自身も必死にそれを隠そうとする。"

 

   "13/多くの日本人が繁栄のワゴンから滑り落ち、そこに再び戻ることができないでいる。"

 

   "14/日本には貧困にある子どもが350万人いる。子どもの貧困率は14%だ。"

 

   "15/日本の経験が示すことは、貧困の主な原因は問題のある行動様式にあるとする保守派の理論に何か重大な、重大な誤りがあるということだ。" 

 

    "16/それではいったい何が貧困を生み出すのだろうか? 貧困は市場経済の自然な帰結だ。貧困を解消するためには、この割れ目に落ちてしまった人々を支援するための介入が必要だ。それ以外に方法はない。" 

 

    "17/我々は、貧しい人々に行動を改めるよう声を荒げるのをやめ、ヨーロッパの福祉国家や低収入の仕事の賃金をあげる方法に目を向けるべきだ。" 

 

文革、VR、宇宙....中国発の圧倒的スケールの王道SF!「三体」

2019年で最高のSF作品をあげるとしたら、間違いなく本命になる一冊。

すでにいろいろなところで話題になっており、本屋でも大プッシュされている「三体」。評価に違わぬ、スケールの大きい超骨太の正統派SFでした。

三体

三体

 

英語版のタイトルは「Three-Body Problem」。ただ元々は中国で刊行されているためオリジナルのタイトルは「三体」になります(単行本は2008年に出版)。3部作になるのですが、中国国内で3作合計2100万部以上を売り上げる大ヒット。2014年には「紙の動物園」などの短編集で有名なケン・リュウによる英訳版が出版され、2015年にはSF作品に贈られる最大の賞であるヒューゴー賞を受賞しました。翻訳の作品、およびアジア人作家としては初めての受賞となったそうです。この度ついに日本語版の登場となりました。

物語は1967年の中国、文化大革命真っ只中の北京で一人の物理学者が運動の犠牲になるところから始まります。当時この運動に傾倒していた人間の思想の偏りや暴力性が緻密に描かれており、その緊張感のある描写によって一気に物語に引き込まれます。

その後40年以上が経ち、世界的な科学者が次々と自殺を遂げているという不可解な事態が発生します。そのうちひとりは「これまでも、これからも物理学は存在しない」という意味深なメッセージを残してこの世を去ります。自殺をした科学者たちの共通点が<科学フロンティア>という団体に属していたことから、主人公はこの団体への潜入捜査をすることになるのですが、捜査の後で彼の身に不思議なことが起こるようになる。その問題を解決するべく動いていく中で、真相は想像をはるかに超えるスケールだったということが明らかになっていきます。

このあたりまでが導入部分なのですが、話のつなぎがうまく、かつテンポがいいので一気に読めてしまいます。全体的に科学や物理の専門用語が盛りだくさんで、ちょくちょく用語をググる必要があったのですが、それでもページをめくる手がなかなかとまらないほど物語に力があります。

タイトルになっている「三体」は、作中ではVRゲームとして登場してきます。このゲームがまたすごい面白そうなんです...!太陽の運行が規則正しく、人間が生きていける気候である時期が続く「恒期」と、太陽の運行が不規則になり極寒と灼熱が交互に襲ってくる「乱期」がある世界という設定で、太陽の運行の規則性を発見して人類を絶滅から守り、文明を発展させるというゲームです。

「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」がVRゲームになったらこんな感じかなというイメージです。殷の紂王やアリストテレスガリレオなどの歴史上の有名人がキャラクターとして登場し、彼との会話をヒントにしながらゲームを進めていくという設定が歴史好きにはたまりません。ゲーム化希望。クリアの難易度は高そうだけれど。ドルアーガとか魔界村すら超えそう。

civilization.com

「三体」のメインテーマですが、これがSFど真ん中の「地球外文明とのファーストコンタクト」です。ちょっとしたネタバレになるかなとも思ったのですが、まあ帯にも描かれているので許されるでしょう笑 

話の舞台は中国から世界、さらには地球外へと広がり、扱われるトピックは宇宙というマクロなものから陽子のミクロの世界まで。時代背景は文化大革命時代という過去から科学が花開く現代までという、このダイナミックな視点の変化が物語に深みを与えており、高いエンターテイメント性を成立させています。

「天気の子」のようなライトなSFを気軽に楽しむのも快いのですが、「三体」のような緻密な設定のディープな骨太SFの世界に耽溺するのも最高です。お盆休みのお供にいかがでしょうか。

 

ケン・リュウ編集の現代中国SFアンソロジー「折りたたみ北京」に収録されている「円」という作品は、「三体」の内の1章を改作したものです。どちらもコンピュータによる計算機能の仕組みを描いていますが、「三体」の方がより衝撃的なラストになっています。とはいえ一つのストーリーとして完結している「円」の完成度の高さも一読の価値があります。

「三体」の作者である劉慈欣(リウ・ツーシン)は 中国の山西省出身。本業はエンジニアで、発電所のコンピュータ管理を担当。1999年のデビュー以降、中国のSF作品賞である銀河賞を複数作品で受賞。短編作品である「さまよえる地球」の映画版「流転の地球」が中国で興行収益約330億円に達したといういまや超売れっ子作家のひとりです(参考までに、「君の名は」の全世界興行収入が約337億円)。

「三体」3部作シリーズの第2部「暗黒森林」は2020年刊行予定。人類文明の希望となる「面壁者」なるものが登場予定らしいです。ああ、早く続きが読みたい。正直東京オリンピックよりもこちらのほうが楽しみかもしれない。首を長くして待ちたいと思います。