THE戯言

Quitters never win. Winners never quit.

アナログゲームプレイ偏愛「顧客が本当に必要だったもの」

反社会人サークル製作のゲーム『顧客が本当に必要だったものゲーム』がついに届きました。

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このゲームは今年2018春のゲームマーケットに彗星のように現れ、多くの業界人に衝撃を与えました。

togetter.com

 

そもそも「顧客が本当に必要だったもの」とは何なのでしょうか?IT業界に携わる人なら目にしたことがある人は少なくないかもしれません。ニコニコ大百科では下記のように説明されています。

「顧客が本当に必要だったもの」とは、ITビジネスにおける多難なシステム開発プロジェクトの姿を風刺した絵に登場する、オチの部分のフレーズ。顧客が期待した通りのシステムとして完成しなかった原因は、開発側の勝手な思い込みや都合の押し付けだと思いきや、そもそも最初に顧客が説明した要件からしてズレていた、というオチ。

つまり、顧客自身にも自分が必要とするものが分かっていなかったということ。(さらに踏み込んで言えば、開発者側もそのことに気付けず指摘できなかったということ。)

以下のような場面に分けられており、ブランコが設置された木のイラストが(IT業界向けとしては)オリジナルだが、絵を差し替えてIT以外のシーンでも使われている。ブランコの形態はソフトウェア・システムの構造・機能・使い勝手・規模などを比喩したものである。

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このようなジョークになるほど、ITビジネスではあるあるの現象なのだと言えます。ご想像の通り、これが起こった場合誰も幸せにはなりません。誰もが辛い、辛すぎる。

 

しかし当事者にとっての悲劇が周囲からは喜劇的に見えるというのはよくあることです。絶対に巻き込まれたくないけれど、ちょっと遠くから見ていたい。安全圏からカオスを眺めて楽しみたい。辛い現実をユーモアで包んで楽しみたい。このゲームはそんな皆様の為に存在します。私も飛びつきました。

 

このゲームは「要件カード」と「成果物カード」の2種類のカードを使ってプレイします。その名前から想像できるかもしれませんが、要件カードの指示をクリアしながら成果物を完成させていくことがこのゲームの進め方になります。ちなみにここで完成させる成果物は「ブランコの木」。

 

こちらが要件カード。どこかで見たことがあるような個性的な方々がそれぞれ自分の立場で好きなことを言っています。このギリギリを攻めるようなデザインがたまりません。

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こちらの関係者の皆々様の希望により、成果物はメチャメチャになります。ブランコの木というシンプルなものが、なんだかよくわからない巨大なキメラのようになっていく様には笑うしかありません。笑っても大丈夫です。少なくともこれはゲームなのですから....

 

また、ゲームは「顧客フェーズ」と「開発者フェーズ」を繰り返して進行します。顧客フェーズは要件追加がアクションになるのですが、定期的に要件追加が発生する仕様になっていることに震えます。「それって開発の前段階で定義しておくものじゃないの?」とか抜かすヤツは何もわかっていないド素人です。このリアリティこそがこのゲームを魅力的にしている重要な要素なのです。

 

最終的にプレイヤー全員の成果物カードがなくなったら終了です。成果物を作る為に自分が出したカードの、2枚以上隣接して塊になっているもの一枚につき1ポイント、そして入手した(=自分が満たした)要件カード一枚につき1ポイントです。最終的にもっともポイントが大きいプレイヤーが勝利となり、「顧客の達人」としてあがめられます。

ちなみにポイントの単位はYTK = やった感。もっともやった感を出した人物が評価され るという、そのリアリティに背筋が凍る思いです。顧客が欲しかったものを的確に出せたかどうかは関係ない。だって顧客の要件は全部満たしているのですから。ここまで世界観をリアルに近づけられる設定を散りばめてくるとは、反社会人サークル恐るべし。

 

これは貪欲に勝利を狙いにいくタイプのゲームではないでしょう。みんなでカオスな状況を楽しむというもので、IT開発のしんどさをネタにみんなで仲良くワイワイやるための平和的なゲームです。顧客の要件にいちいち答えてたらキリないよ、ということを身をもって知ることができるという点で、トレーニング用としても役に立つかもしれません。

 

激しくおすすめです。

 

hanshakaijin.booth.pm