THE戯言

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ものすごく科学的で、(その割には) ありえないほど面白い『すごく科学的 SF映画で最新科学がわかる本』

すごく科学的: SF映画で最新科学がわかる本

すごく科学的: SF映画で最新科学がわかる本

 

350ページを超えるそこそこ厚みのある本だが、一気に読んでしまった。

本書は、そのサブタイトルにあるとおり有名なSF映画を題材に、そこで取り扱われている科学的トピックを解説していくという内容になっている。

誰もが知っている映画をネタに、宇宙やタイムトラベル、人工知能や遺伝子などの最新科学について学べるという非常に為になる一冊だ。

STEM教育が叫ばれる中、少なくとも今話題の科学技術については理解しておきたいと考える方にはオススメである。特に、もともと文系で理系科目には苦手意識があるというような人には本書はまさに最適な科学の入門書になるのではないかと思う。

www.sbbit.jp

本書では、『オデッセイ』を題材に『火星』を取り上げるなど、各章でひとつの映画と、それに対応する科学トピックを取り上げている。この時、論点が明確になるように必ず章の最初にその章で考える3つの問いを設定している。例えば第1章の『オデッセイ』では「どうやって火星にいくのか?」「火星での休暇は健康にいいのか?」「本当に火星で生きていけるのか?」という疑問が設定される。第5章『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では「タイムトラベルは可能なのか?」「タイムマシンの作り方とは?」「自分自身を歴史から消すことはできるのか?」である。

これらの問いに答える形で説明が進んでいくのだが、論点が明確になっているので、読んでいて迷子になることがない。つまり非常に読みやすく、理解しやすい構成になっている。

私は理解が悪いので、科学の本を読んでいると一行一行理解しようとエネルギーを使いすぎるのか、今何故この話をしているのか迷子になることが少なくない。1章読み終わったあとでその内容を振り返ろうとしてもうまく要約できず、実は何も学んでないということに気づき非常に残念な気持ちになることがある(今これを書いていても悲しくなる)。そんな私でもついていけたので、本書が非常によく構成されていることは間違いない。

本書が様々な科学のトピックを取り扱いつつ、説明がシンプルでわかりやすいものになっているのはひとえに著者の力だろう。リック・エドワーズというテレビ司会者とマイケル・ブルックスという科学ジャーナリストの共著であるが、それぞれの専門能力が本著では遺憾無く発揮されていることがわかるだろう。

難しくなりがち、時にはシリアスになりがちな微妙なトピックもあるが、著者のユーモアでうまく包まれており、クスリとしながら読み進めることが可能だ。

例えば、火星で長い間暮らさなければならなくなった場合の食料のメニューは下記のようになるだろうと紹介されている。

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人間が空想できることは全て実現可能であると言われている。

SFで描かれた内容が将来実現するかもしれないと思うとワクワクすることも少なくないが、現段階の科学でできること、わかっていることを理解しておくことは非常に重要だと感じる。

SF作品が好きな人には刺さる一冊であることは間違いない。この本をきっかけに科学に興味を持つ人が増えていくといいと感じさせるような作品だった。

 

 

科学を題材にした作品といえば、今ジャンプで連載中のこちらも紹介したい。

科学文明が滅びた後に一から文明を再興していく様子はシンプルに心躍るものであり、今の生活においていかに科学が重要不可欠なものであるかがよくわかる。