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なぜ裏社会の経済はこんなに面白いのか - 猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

ずっと気になっていたこの本をついに買ってしまいました。

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

 

 

まだ途中までしか読んでいませんが、買ってよかったと思わせる内容です。チャプター1では国際金融、チャプター2ではマネーロンダリングについて書かれているのですが、まるで専門家が書いたかのような、しかもわかりやすい描写が続き思わず引き込まれます。

ベルギーに本部を置くSWIFT(国際銀行間通信協会)は加盟金融機関同士でのメッセージタイプによる通信を仲介する組織で、あらゆる国際決済はもちろん、日本と海外の銀行間送金にもこのSWIFTシステムが使用されている。

加盟する金融機関は、それぞれ個別のコードを持ち、三井住友銀行にはSMBCJPJTが、三菱UFJ銀行にはBOTKJPJTのコードが与えられている。例えるならメールアドレスで、加盟金融機関はプロバイダー役のSWIFTを介したメッセージにより、国をまたぐ送金や証券の決済を指示するのだ。

さて、日本では不的確なパナマ文書の報道が相次いだ。そもそもパナマ文書震源地はパナマではあるが、決してそこが中心地ではない。BVI(英バージン諸島) にこそモサック・フォンセカによってオペレートされた数々の不正が隠されているはずだ。

では、「パナマ文書」から何を読み解くのか ー 私が注目しているのは、CIS(クライアント・インフォメーション・シート)とSWIFTリファレンス(送金指示と資金移動履歴の詳細データ)だ。

まるで専門家と言いましたが、正真正銘の専門家による説明です(SWIFTの説明なんて、橘玲の本以来で久しぶりに目にしました)。ただし、反社会勢力の一員として最先端の金融を専門に活躍していた著者の、いわば裏社会人による経済解説とも言えるような内容になっています。

大阪の銭湯のロッカーからプライベートジェットを使った大量の現金の輸送など、カネの保管についてあらゆるスケールの手段が紹介されていたり、今の国際送金システムの説明を通じてアメリカが国際金融システムを支配できている理由が説明されていたりと、確かに正統派な経済の本には書かれていないようなトピックに焦点が当てられています。

読んでいて軽い興奮を覚えるのは、そのひとつひとつのエピソードが刺激的でスケールが大きいからなのでしょうか。

マネーロンダリングの手法として仮想通貨が使用されていたという話はいまや誰もが知っている話ではありますが、かつて橘玲が作家としてのデビュー作である「マネーロンダリング」という作品の中で描いた「割債の密輸」という方法に比べるとだいぶ洗練されたなあと感じます。

 

国際金融の世界では暴力団の看板なんて何の役にもたたない。最終的に国家には全く歯が立たないのがリアリティだ。その中でもアメリカと銀行はもっとも悪辣で強大な存在だと語る部分にはなんとも言えない説得力を感じました。これも著者が実際に体験した感じたことが余すところなく表現されているがゆえに醸し出る迫力とリアリティがあるためでしょう。

 

普段は目にすることのない、経済の別の顔を知ってみたい方には本書を読んでみると知的興奮を味わえるかもしれません。

 *ちなみに西原理恵子は本書冒頭の猫組長との対談以外では出てきません。

マネーロンダリング (幻冬舎文庫)

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マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)

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