THE戯言

Quitters never win. Winners never quit.

2018年末に読んだ10冊

新年まで残り時間わずかとなりました。

最近更新をサボっていたのですが、本は読み続けていたので年が変わる前にこちらで紹介しておくことにします。来年はもうちょっと定期的に更新できるように頑張っていきたいなあというのが個人的な抱負です。

では以下で最近読んだ本を10冊紹介します。

稼ぐがすべて   Bリーグこそ最強のビジネスモデルである

稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである

 

現在B.LEAGUE常務理事・事務局長である作者が、どのように B.LEAGUEを立ち上げ、軌道に乗せてきたかについて書いた本です。B.LEAGUE立ち上げの前には国内に男子バスケ団体が2つある状況が続いており、それが原因で日本はオリンピックにも出場できなくるという危機的状況にあったことを本書で初めて知りました。

日本とアメリカにおけるスポーツビジネス運営の違いと、アメリカの方法論を参考にしたマネジメント、協会全体としてデジタルを活用したマーケティング戦略のところは読んでいて非常に勉強になりました。デジタル活用については近年のホットトピックになっているので一般の企業に勤めていても参考になるところは大きいと思います。

一方、ここまで進んだ取り組みができたのはゼロから立ち上げたからこそという側面も強く、既存のやり方を変革するという場合にはまた違うアプローチが必要になるでしょう。

テクノロジーの地政学 シリコンバレー vs 中国、新時代の覇者たち

テクノロジーの地政学 シリコンバレー vs 中国、新時代の覇者たち

 

テクノロジーの今後に興味のある人にとっては絶対に読んでおいた方がいい一冊だと思います。タイトルにある通り、シリコンバレーと中国は今新しいテクノロジー企業が生まれる中心地となっています。人工知能、モビリティ、フィンテック、小売など今後大きなブレイクスルーが期待される分野において、シリコンバレーと中国それぞれにおける市場の全体感(どのくらいのお金がその分野に流れているかなど)、メインプレイヤー、どのようなインパクトがすでに生まれているかが綺麗に整理されています。

本書で全体感をしっかり押さえたあとに、一番興味のある分野について自分でどんどん深ぼっていくという使い方ができると思います。定期的に何度も読み直す一冊です。

著者の一人であるシバタナオキさんのnote「決算が読めるようになるノート」は、様々な企業の決算情報から読み取れるビジネスインサイトが毎週紹介されるのでとても勉強になっています。毎月1000円ですが、無料版もあるので興味のある方は無料版から始めてみてもいいと思います。過去のノートをまとめて1冊の書籍(MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣)にもなっています。

本と鍵の季節 (単行本)

本と鍵の季節 (単行本)

 

アニメ化もされた 『氷菓』をはじめとする「古典部」シリーズでおなじみの米澤穂信の最新刊。この作者のミステリは本当に質が高いうえ、本書や古典部シリーズのような高校生を主人公にした青春小説的世界観から「儚い羊たちの祝宴 」や「満願」のような本格ミステリまで作風の幅が広いのが特徴です。本当に力があるからこそできることだと思っています。

本作は図書委員の2人が主人公で、学生として日常生活を送るうえで出会うちょっとした謎を解いていくという流れのストーリーが複数収録されています。全体的には学生の世界をベースにした爽やかなテイストなのですが、毎回謎を解決したあとに残るちょっとした後味の悪さがスパイスになっています。読みやすい文体で軽く読めると思っていたところに思いがけない一撃という感じ。謎解きにもひねりがあって「これはこういうオチだろう」と思っていたこちらの予測を気持ちよく超えて来てくれます。年始のお楽しみ読書にオススメの一冊です。 

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

 

 同じく米澤穂信作品。「本と鍵の季節」を読んだ流れで手にとりました。こちらは「本と〜」とはうって変わっての本格ミステリ古書店で働く主人公のもとに、ある雑誌を探しているという客が現れるというところから話ははじまります。ある作家の作品をすべて集めて欲しいというその客の依頼を受けた主人公が動いていくうちに、過去のある事件が浮かび上がってきて...というお話。

この主人公が集める作家の作品は全て作中作として実際に読めるのですが、それぞれがすでに面白い。芥川龍之介の「藪の中」のような結末のはっきりしない作品(リドルストーリーというらしいです)なのですが、それぞれ独立した話でありつつ、全体としては物語のなかで大きな意味を持つという構成に、ページをめくる手が止まらずカフェで一気に読んでしまいました。この完成度の作品にはなかなか出会えないと思うほど面白い作品でした。

ちなみに本作品の中で紹介されていた世界三大リドルストーリーのうち、マーク・トウェインの「恐ろしい中世のロマンス」はこちらで読むことができました。世界三大と呼ばれているだけあって完成度の高い短編でした。

何者でもない

何者でもない

 

テレビ朝日の人気番組「フリースタイルダンジョン」でラスボスを務め、来年1月11日に武道館コンサートを控えるラッパーの般若の自伝です。

子供の頃はいじめられっ子だったという著者が日本語ラップと出会い、それからずっとシーンの第一線を走ってきた様子が綴られています。ラップを始めたことで憧れの対象だった長渕剛と親交を深めるようになったところに夢を感じますね。

子供が生まれた時、自分より先に長渕に抱いてもらったというところに本当に長渕剛を尊敬しているということを感じます。

最近はTeststeroneという方と一緒に筋トレに関する本を出しています

筋トレ×HIPHOPが最強のソリューションである 強く生きるための筋肉と音楽)。ワークアウト用の楽曲を書き下ろしたそうですから相当です。正直読むかどうか悩むところです笑。

1月の武道館ライブ、行きたかったなあ....でも仕事が泣

十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる (新潮文庫)

十字軍物語 第一巻: 神がそれを望んでおられる (新潮文庫)

 

 塩野七生の「十字軍シリーズ」第1巻。文庫になったのをきっかけに読んでみようと手に取りました。

歴史上複数回行われた十字軍遠征。それがどうやって始まったかというところから第一次十字軍の結果どうなったかということが詳細に綴られています。世界史の授業では「1096年 第一次 十字軍 結果:イェルサレム王国樹立」くらいしか触れられなかったと記憶してますが、その背後にある膨大な物語(遠征途中に直面するコンスタンティノープルの皇帝とのいざこざやトルコ兵士との戦闘など)は読んでいて圧倒されるような迫力があります。

この本一冊書くだけでも世界各地に保存されている数多くの歴史書にあたり、それぞれを付き合わせてその記述の妥当性などを検証する作業が必要になるはずで、その労を想像すると感服のひとことです。これだけ良質な歴史書を日本語で読めることに感謝の念すらでてきます。

一巻ですらすごいボリュームですが、それでもまだ十字軍の物語は始まったばかり。第2巻ではイスラムの英雄サラディンが登場するということで今から読むのが楽しみです。

十字軍物語 第二巻: イスラムの反撃 (新潮文庫)

人類5000年史I: 紀元前の世界 (ちくま新書)

人類5000年史I: 紀元前の世界 (ちくま新書)

 

 歴史と言えばこのシリーズも外せません。元ライフネット生命社長で、今はAPUの学長を務める出口さんのライフワークとなっている歴史シリーズの一冊です。

出口さんの歴史に対する造詣の深さはかねてより話題になっている通りですが、その才能が遺憾無く発揮されています。1000年区切りで人類史上に起こった出来事をまとめており、同じくらいの時代においてヨーロッパでは何があってアジアでは何があったかの比較がしやすくなっています。歴史における縦軸と横軸の整理がしやすい構成になっているのが嬉しいです。

最近2巻目が発売されました。年末年始で時間のある今、しっかりと腰を据えて学びたいと思っています。

人類5000年史II (ちくま新書)

真説・長州力 1951-2018 (集英社文庫)

真説・長州力 1951-2018 (集英社文庫)

 

 「真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男」を読んだ勢いでこちらも読破。

長州力へのインタビューを軸に、数多くのプロレス関係者への取材を重ねてできた一冊。タイトルの通り、軸は長州力という人間についてなのですが、長州力という人間は長きにわたって日本のプロレスシーンの中心であったことから、日本のプロレスの歴史的イベントをほぼ網羅するような内容になっています。章の中にはほぼ長州が出てこないところも存在します。Uインター安生洋二によるヒクソン道場破りのエピソードが紹介されている章が例として挙げられます。

ただ、安生選手はのちに(1995年)新日本プロレスUインターとの対抗戦を東京ドームで行う際に長州力と一騎打ちをするという形で大きな関わりを持ちます。ちなみに長州力のモノマネで鉄板ネタの「キレてないですよ」の元ネタとなったのは、この安生洋二との試合後に記者から受けた質問に対しての長州の答えだったりします。(ただし、そのとき長州が言ったのは「キレちゃいないよ」というところが正確な内容らしいです)

話を戻すと、自伝的著作に日本のプロレス界で起きた大きな出来事がだいたい網羅されるくらい、長州力というプロレスラーの存在が日本のプロレス界において大きな存在だということだと理解しています。

いち選手としてだけでなく、社長、現場監督など様々な顔を持ってきた長州力というプロレスラーについて知るにはこれしかないという一冊になっています。

ちなみに長州には「俺はお前のかませ犬じゃねぇぞ!」発言や「死んだら墓にクソぶっかけてやる!」発言、「コラコラ問答」など、話題になるような発言が多く、それらの背景をちゃんと知れたのもよかったなと個人的に大満足です。

youtu.be

怖いへんないきものの絵

怖いへんないきものの絵

 

中野京子の本は面白い!

怖い絵」シリーズが大ヒットし、2017年には「怖い絵展」が 開かれるほどの人気になりました。絵が書かれた当時の時代背景や、絵の中に描かれているものの意味を知ることでより深くその絵を理解できるというコンセプトで生まれた本シリーズは読者の知的好奇心を大きく刺激し続け、新しい発見という喜びを届け続けています。

そんな中野京子の最新作は、「へんないきもの」でおなじみの早川いくをとの共著。絵画の中に登場する生き物につっこみを入れていくスタイルです。

他の「怖い絵」シリーズと同様、各章のはじめに絵画作品を一つ紹介して、そのあと内容について深く掘り下げていく流れなのですが、後々言われれば確かに変だという内容が、最初にその絵を見た段階で全然わからないことが多いのです(笑)ここで紹介されている作品のほとんどについて、美術館に飾ってあったら間違いなくスルーしてしまう自信があります(笑)やはり、背景知識をしっかり持っておくということはアンテナの感度を高めるということに繋がってくるという意味で重要なんだなあとつくづく思います。

GoogleにArts&Cultureという世界中のアート作品を紹介するアプリがあり、最近は毎日少しづつそれを眺めるということをしています。2019年の習慣にしたいと思うことのひとつです。

artsandculture.google.com

 

ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活

ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活

 

 最後の10冊目はこちら。

あまりに自分の生活圏と環境が違い、「本当に日本の話?」と思わざるをえないくらいインパクトのあるエピソードで溢れているルポルタージュ

「魔窟」。この本を読んでいるときに思い浮かんだ西成の率直なイメージがこちらです。そこでは仕事も人々の生活も、さらには人間そのものも私の知っているものとは大きくかけ離れていました。

銭湯で出会った、他の人には見えない「英作」という男性に向かって怒鳴り声をあげながら手に握りしめたカミソリを振り回す男。人の命がとても軽く扱われるビル解体現場。怖いもの知らずに思える著者でさえヤバイと近づけなかったハッテン場....

紹介されるトピックがどれも濃すぎる。あまりにクレイジーすぎてむしろ逆に見てみたいという気持ちすら出てきます。いや、そう思わせるのは実際に西成で仕事をしつつ暮らしてみた著者の経験と描写力のなせるワザなのかもしれません。

この本を読み終わったあと、作中で紹介されている場所をGoogle Mapでチェックしてみました。実際にそこに足を運ぶ勇気まではない私としては、実際に存在しているところを確認できただけでとりあえずはよしとしようと思っています。いつか、何かご縁があれば実際に訪れてみるのも悪くないかな...? まあ、いつかは(笑)

Google Mapで西成付近を調べていたときに発見したのですが、飛田新地のあたりの街並みもしっかり見られるんですね。このあたりをカメラを背負った人が歩いたということですが、相当危険だったんじゃないかと心配になってしまいました。Googleさん、無茶なさらずに....

 

今後も定期的に読んだ本を紹介できればと思います。次のトピックはこの正月休みに読む予定の本を紹介しようかなと考え中です。

4月から始めたこのブログもなんとか細々と続けることができました。来年もできるだけ続けていきたいと思っています。

目を通してくださっている皆様には感謝申し上げます。2019年まであとわずか、どうか良いお年をお過ごしください。

そして、2019年もどうぞよろしくお願いいたします!