THE戯言

Quitters never win. Winners never quit.

ビジネスマン必見!不安定な2019年に備えるために『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』

皆様、あけましておめでとうございます。2019年が皆様にとって素晴らしい年になりますように!

新年最初のエントリで紹介したいのはこちらの一冊です。

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

 

専業トレーダーとして200億円以上の資産を築いたという、cis(しす)という有名な個人投資家が自身の投資哲学について綴った本です。

普段こういう本はあまり読まないのですが、まわりで少し話題になっていたためちょっと手にとってみたら想像以上に良い本でしたので紹介します。正直もともとの期待値が低かったのかもしれませんが、この本からの学びは決して小さくありませんでした。

本の構成としては、前半部分は著者がトレーダーとして活動する際にどういう考えに基づいているか、後半部分は自身の半生を振り返りつつ、節目節目でどのようなことを愛に、今の「日経平均を一人で動かせる」と言われるほどの大トレーダーになったかを紹介しています。

こちらの本で紹介されるのはあくまで著者の投資「哲学」であり、チャートの読み方などの細かいトレードのテクニックの解説などは一切ありません。またあくまで著者個人の考えということもあり、自分でトレードを行う際にはあくまで参考程度にすべきものかなと思います。この哲学通りに投資したからといって勝てる訳ではありませんし、別のスタンスで資産を築いている人もおられると思います。

当然といえば当然ですが、この本を読んだからといってすぐに投資で勝てるようにはなりません。具体的なアドバイスやオススメの投資商品情報などを期待している方は「ダイヤモンド ZAi」や「日経マネー」などを読むほうがよいでしょう。

本書から得られる学びはより抽象度が高く、それゆえ投資以外のことにも転用できる内容が多いと感じました。投資とは関わりのないビジネスパーソンが読んでもその後のキャリア形成に役立つ内容があると思います。

例えば、彼が今の資産を築くにあたって従ってきた大原則である「マーケットの潮目に逆らわず買う。そして潮目の変わり目をいち早くキャッチする」。こちらはビジネスパーソンが自分のキャリアをどこで積むかを考える上でも非常に重要な考えです。成長分野にある業界に身を置き続けるほうが、衰退産業の中でキャリアを重ねるよりもよりチャンスが大きいであろうことは直感的に理解できると思います。率直に言ってしまうと、ビジネスパーソンとしてはそこそこ程度でも、新しく台頭している分野の知識があるというだけで渡っていけるというケースは少なくありません。最近では特に市場の成熟サイクルが早いので、常にチャンスのある分野を見逃さないようにアンテナを張っておくのは重要となるでしょう。

また別の例は「とにかく仮説を考える」ということ。第2章でこう語る部分があります。

僕は相場オタクと言えるかもしれない。

「こんなことが起きたら、こんな展開で儲かる」みたいな仮説をいつも考えていて、アイデアを何十個か持っている。それがたまに実際に起こることがあって、そんなときは「はい、きた」みたいな感じになる。

「円安になったら輸出産業は利益が上がって株価も上がるはず」みたいな半ば常識なものではない。

すでに常識になっているようなものではなく、まだほとんどの人が考えていないもので、明確なロジックがあるもの。あるいは誰も指摘していないしロジックは不明だけど、経験則として明確な関連が認められるもの。

ここを読んだ時に真っ先に頭に浮かんだのは、ピーター・ティールが面接の際に必ず聞くという「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か」という「隠れた真実」でした。PayPalやパランティアなどの企業を立ち上げ、今やシリコンバレーでもっとも有名な起業家のひとりであり投資家でもあるティールと全く同じことを考えて、この著者は日々のトレードをしているということに驚きを感じました。

ティールについて詳しく知りたい方はこちらをオススメします)

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか

 

 本書で仮説の例としてあげられている内容の詳細についてはここで触れることはしませんが、そういう視点があるのかと思いつつも説得力のあるような内容になっていました(素人ゆえの私の知識不足という側面があることは否めません)。ゼロサムゲームである相場において勝っている人にはやはりその結果を出すだけの理由があるんだなと認識しました。知られていない攻略法、隠れた真実が相場には数多く眠っていると言います。

著者が相場で大きな資産を築いてきた過程を知ると、状況の把握ファクトチェック)→仮説の構築→仮説の検証(実行)という一連の流れをひたすら繰り返してきたことがわかります。長年相場という世界で実績をあげてきた著者が過去に行った事例ではこの一連の流れがハイレベルで行われており、その見事さは非常に印象的です。

ちなみに、この状況の確認を重視するためか著者はマーケットのことはマーケットでしか学べない、本を読んでも相場には勝てないという徹底的に今起こっていることを重視するスタンスを取っています。

PDCA(Plan→Do→Check→Act)サイクルという概念がありますが、著者も自分の理論を何度も否定していくという形でこのサイクルを回してきたんだということがわかります。著者の過去の話を読むと、学生の頃からこれを続けて財産を築いていたそうで、ビジネスマンとしてキャリアを積んでいたとしても大きな結果を出す優秀な人材であっただろうと思います。すでに高校生の頃から人を雇って収益をあげるモデルを構築していたところに非凡さを感じます。昔から儲けのポイントに対する嗅覚が鋭く、それを実行できるだけの行動力もあった人物であったようです。この昔の話も非常に面白くて示唆に富む内容が多いのでぜひ読んでみてください。

最後に、過去の相場のことを学ぶこと、イレギュラーなことが起こった場合にアナロジー的に考えることができ、そこから勝てる方法を思いつくことがあると指摘していることも重要と思いました。特に2019年は政治的にも経済的にも先行き不安定な年になりそうという見込みがあるため、歴史を学んでおくことでいざという時の自分の行動の指針とすることができるかもしれません。このアナロジー的な思考というのが重要であることは、著者が株式取引だけでなく仮想通貨でも大きな利益をあげていることからわかります(どうやったのかはぜひ本書で)。

 

マーケットの潮目に注目すること、仮説の構築、検証サイクルを回し続けること、歴史を学ぶこと。だいぶ抽象的ですがそれだけ他のことにも転用できる内容かなと思います。相場という金融市場ではなく、労働市場をメインの戦場としている私にとっても今後に活かせる内容が多かったです。当然今後株取引を行うことになった場合にも参考にできるので、買ってよかった一冊だったなと感じました。

 

とはいえ、やはりトレードだけで億単位の資産を形成するのは一握りの人間だけというのも事実かなと思います。凡人である私の資産形成の指針にはこちらを参考にしています。

臆病者のための株入門

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