#SNSを愛し、SNSに愛された女 - SNSで夢を叶える
かつてHKT48に所属し、いまや「モテクリエイター」という肩書きでTwitterのフォロワー24万人以上、Youtubeチャンネルへの登録者40万人を超える彼女が他の誰よりも自信を持っていること。それは、
「私が誰よりもSNSが好きだ!」という想い。
決して最初から順風満帆だった訳ではない。何を発信しても「死ね」といったようなネガティブな反応しか帰ってこない時期もあった。脅迫まがいのリプライが届くこともあり、炎上も経験した。それでも彼女は諦めなかった。
ひとつひとつ、何がうまくいかなかったを検証し、どうしたらもっとよくなるかを試し続けた。何度もトライアンドエラーを繰り返した。手応えのあるものもあれば予想もしない反応を招いたものもあった。そのうちにSNSの特徴についてもわかってきた。好意的な反応が増えてきた。アンチばかりだったフォロワーが味方ばかりになっていた。いつの間にか使用しているSNS全てを合わせたフォロワー数は70万人を超えていた。ニートだった頃からたった1年半で、年収は100倍以上になっていた。
彼女はまさしくSNSで夢を叶えた。これは現代のシンデレラストーリーのひとつであると言えるだろう。
いまや彼女は間違いなくSNSに愛されている。
菅本裕子ことゆうこすの著書『SNSで夢を叶える』は、HKTを脱退してどん底の状態にあった彼女が「モテクリエイター」としてSNSを通じて自己プロデュースをし、多くのフォロワーを抱えるようになり、いつしか好きなことをして生きていけるようになった経緯をつづった著書である。
SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方
- 作者: ゆうこす
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/09/14
- メディア: 単行本
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そのシンデレラストーリーも素直に面白いのだが、この本の白眉は彼女が試行錯誤していく中で獲得していった各SNSの特徴に対する深い洞察とその活用のヒントを惜しみなく公開しているところである。
セルフブランディングのために個人として情報を発信している人はもちろん、規模の大小に関わらず事業に携わる人でSNSマーケティングや広報を担当している方も読んでおいた方がよいだろう。SNSで効果的にメッセージを伝えるにあたっての役立つヒントが豊富に紹介されているからだ。
本書では、彼女の使用しているSNS、すなわちTwitter、Instagram、Youtube、LINE(LINE@)、LINE LIVE、ブログについて彼女がどう使い分けているかを例を交えて詳説している。
彼女が持っているSNSに関する知見、洞察には目を見張るものがある。下記のTwitterとInstagramというメディアの本質を簡潔に述べた箇所はその一部である。
ツイッターは共感・拡散型のメディアですが、インスタは検索・掘り下げ型のメディアなので、同じような投稿をしてもダメ。
別の箇所ではTwitterを「本音」と「共感」がメインのSNSであり、インスタは「憧れ」がベースにある自己プロデュースにもっとも向いたメディアであるとさらりと分析している。
このように各SNSには「特徴」があり、活用における「基本」がある。基本的にはSNSで拡散してもらえるポイントは「共感してもらえるかどうか」なのであるが、それぞれ微妙に特徴が異なるので、「どんな人に見てもらいたいか?」や「どういう書き方をすれば相手の心にスッと入っていくか、共感して感動してもらえるか」を考えた上で最適なツールを選択しないと、メッセージがうまく届かなくなるおそれがある(著者はTwitterやインスタ、Youtubeを紹介するときにそのメディアのメインユーザー層に触れている。最適な人にメッセージを届けるためにどんな人がそのメディアを使っているのかということを把握していることがわかる)。
各SNSの基本を押さえた上で、それぞれを使う際に使える具体的なテクニックも非常に参考になる。例えば、Twitterでは「リンク先をビジュアル化して表示できる」Twitterカード機能を使うとリンク先へのアクセス率が上がりやすくなるだとか、写真メインのインスタでこそ「長文で詳しく」書くことで情報の信頼度をあげることが大事だということである。彼女が自分の頭で考えながら実行し、実際に成果をあげてきたものであるがゆえに、なぜそれが重要なのかという理由がすとんと肚におちるのである。ぜひそれぞれどういうテクニックがあるのかは確かめてほしい。
彼女が書いていることも当然面白いのだが、書かなかったこともまた興味深い。Facebookが全く取り上げられていないのである。この本を読んだ人にはその理由は明らかだろう。いや、読んでなくても若い人には自明のことなのかもしれない。Facebookが中年たちのメディアになっているのだということを感じてしまいなんとも言えない気持ちになった(若い男性層はまだ使っているかもしれない、という一縷の望みにかけることで自分を慰めることにする)。
最後に、読んでいてはっとさせられたことを紹介したい。
SNSで発信していると、自分が「憧れ」の対象になることばかりを考えて投稿してしまうことがあります。でも、それだけでは「応援できない」。コアなファンにはなってもらえません。
葛藤やその時の悩みを打ち明けることで、ただの発信者とフォロワーの関係から、仲間へと変わります。
確かに自ら情報を発信するとなると、少しでもスマートに思われたいとかリア充に見られたいという思いは少なからずあって、ちょっとスカした小賢しい投稿をしてしまうことがある。でも、そんな内容には全く共感できない。
自分の弱いところ、ダメなところもオープンにした、コンプレックス丸出しでそれでも頑張っています的なブログの方に惹かれることは私自身経験することが少なくない。
天狼院書店という変わった名前の書店のwebサイトでは、メディアグランプリとして書店員の方やその書店で開催されているライティングゼミの受講者が寄稿し、そのビュー数を競うということが行われている。
そのメディアグランプリで圧倒的な成績をおさめている川代紗生さんの書く<川代ノート>シリーズは、まさにそんな自分のかっこ悪いところ、恥ずかしいところを前面に押し出すようなスタイルだ。だからこそ、圧倒的に読まれ、シェアされるのだろう。
『SNSで夢を叶える』のAmazonの書評欄を見ると、「当たり前の内容」とか「特に目新しいものはなし」といったコメントが目に入った。この人たちにとっては本当にそうなのかもしれないが、おそらくゆうこすほどのフォロワーはいないだろうし、彼女ほどSNSを実際に使いこなしているような人たちではないだろう。How toについて頭でわかっているつもりでも、それを実行できる人は少ないからだ。それが自分の弱みを見せるということなら、効果的だと頭ではわかっていてもできないのではないか。(できたとしてもなにかしら打算的な感じは隠しきれないのではと思ってしまう)
アクティブに使う/使わないに関わらずSNSが身近にある現在、その効果的な活用方法を知ることは決してマイナスにはならない。もしあなたが自分の考えをより効果的に発信したいというのであれば、この本を読むことでそのためのヒントがきっと掴めると思う。そのうえで自分のなりのやり方を見つけていくのも良い。あなたにもSNSで夢を叶えるチャンスはあるかもしれない。